【天童荒太】「幻世の祈り」★★★★【読後】

<< 所英男、完勝【K-1 WORLD MAX】 | main | ニュース侍！2005/10/4 ゲスト近藤有己後編 >>

【-】スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| このBLOGのTOPへ|

2006.04.30 Sunday

| - | permalink |-

【ぶっく】【天童荒太】「幻世の祈り」★★★★【読後】

あまりの重さに、ずっと読んでいると心が疲れてくるので
ちょこちょこと少しづつ読み進めていた
天童荒太著家族狩り第1部「幻世の祈り」を漸く読了しました。
どういう話だったかというと。

高校教師・巣藤浚介は、恋人と家庭をつくることに強い抵抗を感じていた。
馬見原光毅刑事は、ある母子との旅の終わりに、心の疼きを抱いた。
児童心理に携わる氷崎游子は、虐待される女児に胸を痛めていた。
女子高生による傷害事件が運命の出会いを生み、
悲劇の奥底につづく長き階段が姿を現す。
山本賞受賞作の構想をもとに、
歳月をかけて書き下ろされた入魂の巨編が、いま幕を開ける。
（「BOOK」データベースより）

と、手抜きしてみましたが、物悲しさに包まれた物語の幕開け、
5部作の序章となるのが今作。
以前読んだ95年版「家族狩り」と比べると、
えぐ過ぎる描写がかなりソフトにというか、ほとんど無くなってはいましたが、
今の所、ストーリーはほぼ同じでしょうか。

これがどう変わっていくのか、
2004年に大幅加筆というか、新たに描かれた今作と95年版との差異。
そこにこそ、天童氏が新たに導き出そうとしている彼なりの答えがあると思うんですよね。
約9年という歳月は何を生み出そうとしているのか。
それでも何も変わらない結末なのか、それとも？
このまま第2部「遭難者の夢」へとなだれ込む次第。

お薦め度
★★★★

印象に残った言葉はというと。

酒に酔い、暴れて子供に怪我をさせ、
警察に連れて行かれた男の幼い娘との会話。
「お父さん、遠くへいくの？」
「ううん、そんなに遠くないよ。
酔ってらっしゃるから少し休んでてもらうだけ」
「あたしは行かなくていいの？」
「玲子ちゃんは、別の場所で眠るのがいいと思うの。
今、おなかは空いてない？」
「お父さん、帰って来る？」
「もちろん帰ってくるよ」
「だったらここで待ってる」
「ひとりでは置いていけないのよ」
「いつだって、ひとりだったもん」
心が痛くなりますね。

形だけの生徒補導に出る高校美術教師浚介の言葉。
「学ばなきゃいけないのは、欲求を行動に移したときの、
リスクと満足との損得勘定だろ。
欲求自体を抑え込んでどうする。
だから未熟な大人が増えるんだ」

そして、信じ難い「幻世の祈り」を目撃し、
家族というものに抱いていた思いが揺らぐ、馬三原の悲痛な叫び。
「家族とはそういうものだ。
家族とはそういうもののはずだ。
そうじゃないのか？」
この問い掛けの答えを探しながら、読み進める次第。